肥満は遺伝なの?

肥満には遺伝が関わるのでしょうか。従来、肥満は個人の意思の弱さから引き起こされるものと考えられてきました。

しかし最近の研究の結果では、体脂肪の蓄積と食欲の調節は個人の意志ばかりではなく、遺伝情報によってもコントロールされていることがわかってきたのです。

肥満遺伝子と呼ばれる遺伝子情報があります。これは摂食量の調節から肥満を防ぐように働く遺伝子であり、更には体温の高い低いなどによるエネルギー消費の大小にも関わっています。

それゆえに肥満になりやすい遺伝子を持つ人は、食べる量とエネルギー消費量の観点から不利になっていることは確かです。

レプチンが肥満と遺伝の一因

肥満に関係する体内物質の1つに、レプチンというものがあります。レプチンは食欲を調節する役割を持っています。

レプチンは脂肪細胞が作り出す体内物質なのですが、体脂肪が増加するとレプチンが活発に作り出されるために食欲の抑制作用から摂食量が減少します。

また、レプチンの作用には消費カロリーを高めるものもあります。

レプチンが増えることによって褐色脂肪細胞の熱生産量を高めて、消費カロリーの量を増やすのです。褐色脂肪細胞とは、体脂肪を消費しながら熱を生産して体温を維持する役割を持つ脂肪細胞の一種です。

レプチンによるこれら役割の結果、体重が一定に保たれるのです。

すなわち体脂肪が増加するとレプチンが活発に合成されるため体脂肪の増加が抑制され、体脂肪が減りすぎるとレプチンの合成量が少なくなるため体脂肪が増加するわけです。

その一方で、肥満になりやすい遺伝子を持つ人はレプチンの合成量が少なく、体脂肪が増加しても脂肪細胞でレプチンが作られる量が限定されてしまいます。

これが肥満に遺伝子が関わる理由の1つです。

ヒスタミンも肥満に関わる体内物質

肥満にはヒスタミンという体内物質も関係します。ヒスタミンもレプチンと同様に、食欲の抑制や消費カロリー量の増減に関わります。

上記では、レプチンが体脂肪の増減を調節すると解説しました。その一方でレプチン受容体異常というレプチンが作用しにくい状態があり、すなわちレプチンがどれだけ合成されてもレプチンが体内で作用しない状態を指します。

レプチンがヒスタミンに到達して初めて食欲抑制や消費カロリー増加などの抗肥満作用を生み出しますが、レプチン受容体に異常があればレプチンがヒスタミンに到達できないのです。

その他にも、褐色脂肪細胞などの熱生産に関わる部分の遺伝子の異変(エネルギー倹約遺伝子)を持つ人の場合も、体脂肪の燃焼と熱生産による消費カロリーが少なくなります。

工夫で肥満を克服

しかし肥満の原因の全てを、遺伝のせいにする訳にもいきません。

もしこのような遺伝子をもって生まれてきたのであっても、食物繊維を多めに摂取して食欲を満たす、またはスープメニューを多用して低カロリーでありながら食欲を満たすなどいろいろと工夫することは可能です。

更に言えば、肥満になりやすい遺伝子を持つ日本人は多いので、この遺伝子を偶然に持ってしまったとしても悲観的になる必要は全くありません。

例えば体脂肪の燃焼に不利な体質を持って生まれてくる日本人の割合は、全体の約2割にも達します。もちろん肥満に関わる遺伝情報には体脂肪の燃焼に限定されるものではなく、食欲に関するものなど非常に多く存在します。

誰でも多かれ少なかれ、何らかの肥満になりやすい遺伝子の1つは抱えていると考えたほうが気も楽です。